2024年10月号
ニューストピックス
■輸入差し止め件数が過去最多を更新(財務省関税局)
■「パルワールド」開発企業を特許権侵害で提訴(任天堂)
■インクカートリッジ訴訟、リサイクル会社の控訴棄却(大阪高裁)
■2024年度知的財産権制度入門テキストを公表(特許庁)
●輸入差し止め件数が過去最多を更新(財務省関税局)
財務省は、全国の税関が本年6月までの半年間に知的財産権侵害を理由に偽ブランド品などの輸入を差し止めた件数が1万8153件だったと発表しました。前年同期比で16.2%増、過去最多を更新しました。
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2024_1/index.html
2022年10月の改正関税法の施行で、海外事業者から送られる模倣品は個人で使用する場合でも、新たに税関の取り締まりの対象となったことが主な要因です。権利別でみると、偽ブランド品など、商標権侵害が全体の95%の1万7334件、偽のキャラクターグッズなど、著作権侵害が685件。品目別では、衣類が全体の件数の32.0%で、次いで財布やハンドバッグなどが20.1%、靴類が11.1%。
◆輸入差止申立制度◆
「輸入差止申立制度」とは、全国の税関で海外から輸入される侵害物品を「水際」で排除することができる制度です。
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_001.htm
この制度を利用すれば海外で違法に製造された模倣品が日本国内で流通してしまう前に阻止できるので、海外から輸入される模倣品対策に有効です。裁判に比べて低コストであり、結果が出るのが早いのもメリットです。
●「パルワールド」開発企業を特許権侵害で提訴(任天堂)
人気ゲーム「パルワールド」(Palworld)が複数の特許権を侵害しているとして、任天堂は、「ポケットモンスター」のライセンス事業を手がける「ポケモン」と共同で、ゲームを開発した「ポケットペア」に対し、侵害行為の差し止めと損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしたと発表しました。
https://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2024/240919.html
「パルワールド」は、本年1月の発売から約1カ月で総プレーヤー数が2500万人を突破するなど、大ヒット作として話題となりました。一方で、デザインが「ポケモンシリーズ」に類似している部分が多いとの指摘がユーザーから相次ぎましたが、今回の訴訟は、著作権ではなく特許権侵害の訴えとなっています。「ポケモン」のデザインではなく、ゲームシステムなど別の部分が問題になったとみられます。
●インクカートリッジ訴訟、リサイクル会社の控訴棄却(大阪高裁)
プリンター用インクカートリッジの仕様を変えてリサイクル品の販売を妨げたのは独占禁止法に違反するとして、リサイクル品の製造販売会社「エコリカ」が「キヤノン」に仕様変更の差し止めと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は、一審判決を支持し、エコリカ側の控訴を棄却しました。一審・大阪地裁の判決によると、エコリカはキヤノンの使用済みインクカートリッジを回収し、インクを再注入して純正品より安い価格で販売。キヤノンが2017年に発売した製品でインク残量を表示させるICチップの仕様を変更し、再注入してもプリンター上は「インクなし」と表示されるようになりました。一審判決は、インク残量が表示されなくても、カートリッジの本質的な性能に大きな影響を与えないと指摘。「消費者が純正品の購入を余儀なくされているわけではない」とし、独禁法違反に当たらないと判断しました。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/207/092207_hanrei.pdf
●2024年度知的財産権制度入門テキストを公表(特許庁)
特許庁は「2024年度知的財産権制度入門テキスト」を公表しました。
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/2024_nyumon.html
テキストは、特許、実用新案、意匠、商標の各制度や、不正競争防止法、著作権法などを網羅し、知的財産権について初めて学ぶ方にとっても、わかりやすくその概要が示されております。また、各種支援策や地域におけるサービス等についても紹介しています。